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経学家とは、儒家の経書研究において一定の成果をあげた学者を指します。これらの学者たちは、経書として著された思想の精華を吸収して実際にそれを活用し、国家経済や人々の暮らしに役立てることを主な目標としていました。経学は儒家の重要な経典である四書五経を主軸として、歴代の学者たちが絶えず研究を重ねてきた関連の学問をその範疇としています。清代に至ると、研究方法も日ましに厳密になり、史学や言語学、文字学、金石学、地理学など、その他関連の学問をも博引傍証することによって相互に補完され、充実した学問体系が形成されました。その中にあって清代の経学家は、経文の解釈や考証を行い、その意味や内容を深く理解するとともに、宣揚や批判など、様々な研究活動に携わっていました。経学によって世を治め民を救おうという学者たちの熱意がひしひしと感じられます。

清代の経学家による研究成果には見るべきものがあります。それと同時に書法を得意とした者も少なくありません。この度の展覧会では、国立故宮博物院所蔵作品から経学家16名の書を選んで展示いたします。伝統的書法が新たな輝きを放っているのがおわかりいただけるでしょう。宋、元、明─各時代の書学の伝統を継承していた清代の人々は、しっかりとした基礎があったのはもちろんですが、清代には古代の文物や石碑が次々に発掘されたため、前代には見られなかった、書学にとって非常に貴重な資料を目にする機会にも恵まれました。経学家は「事実求是」という一貫した姿勢で研究に取り組み、古代文字篆書の形音義に詳細な解釈を加え、隷変(篆書から隷書への変化)の過程を詳らかにしました。その書法作品には学識の深さが感じられ、前人の偏狭さや作為的な誤りなどの欠点が取り除かれています。経学家に書壇をリードする意図はなかったにせよ、学術的教養と書芸が重ね合わされた結果、それは大きな原動力となり、清代篆隷書法に新たな境地が切り開かれたのです。

審美的な視点から見ると、経学家の書芸は儒家が重んじた中和の精神に重きが置かれ、筆遣いには極端な激しさもなく、過度の情感にまかせた奔放なものでもなく、学識と教養の深さが感じられ、その精華が自ずと表れています。『孟子・尽心篇』には「充実せる之を美と謂ふ。充実して光輝ある之を大と謂ふ。」(充実しているのを美といい、充実して光り輝いているのを大という。)という一節があります。清代の経学家の書法は作者の際立った個性が表現されたものではなく、その作品にはいくら探求しても尽くせぬ奥深い意が秘められています。