國立故宮博物院 大観─北宋書画特別展
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作品解説

分格線
絵画

中国絵画の主な課題は、作画技術、画家の専門性、絵画に込められた思想、絵画の種類、個別の画風、地域性の確立、創作における文化的な要素などが挙げられる。北宋時代(960‐1127)、中国絵画は成熟し完成された段階にまで達しており、後世の絵画はおよそこの時代に確立された様式や概念に従ったものといえ、新しい創作の道が開拓されたのである。

山水画は、范寛「谿山行旅」(約1000)、郭煕「早春」(1072)、李唐「万壑松風」(1124)という国宝級の名蹟三点を同時に展示する。北宋山水画最盛期の完成度と百数年間に渡っての変化の軌跡が見て取れる。

宋 谿山行旅図 范寛
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谿山行旅図
范寛
宋 早春図 郭熙
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早春図
郭熙
宋 万壑松風図 李唐
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万壑松風図
李唐
宋 山鷓棘鵲図 黄居寀
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山鷓棘鵲図
黄居寀
宋 双喜図 崔白
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双喜図
崔白
梁 八達春遊図 趙嵒
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八達春遊図
趙嵒
宋 文会図 徽宗
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文会図
徽宗
宋代絵画の文献に、〈谿山行旅〉の作者である范寛は、「当時名を馳せた」職業画家に属するとある。地域的な風格から見て、この作品は華北山水画の代表作と見る現代の研究者もいる。構図の印象から見ると、中国画における視点の移動という構図的な特色を体現しているとする研究者もいる。または、この作品は唐代以来の画法、景物の積み重ねで表現する「高遠構図」が完成されたもので、北宋「広偉山水(広大な風景を描いた山水画)」の代表作と見なされ、「道」という哲学理念から見ると、この作品には人と自然が調和して共存する関係が表現されているともされる。

70余年の後、神宗朝(1068‐1085)の宮廷画家であった郭煕は、「谿山行旅」の雄壮偉大な山水画の風格を継承し、「早春」に「高遠」、「深遠」、「平遠」構図法を用い、全景を表した「真の山水」を描いた。画面には、実体のある山川、樹木、建築物、そして実体のない雲霧、たちこめるもや、空気などが描かれており、画家の極めて高度な作画技術を表している。「早春」に描かれた山や石、樹木、川の流れに見られる適切な配置は、当時の国風や人民の倫理秩序を象徴しているとも解釈される。

「谿山行旅」と「早春」のいずれも、ごく小さな庶民の姿が画面を飾っている。画家は全力を尽くして彼らの身分や衣装、動作、表情を描写した。この種の写実的、叙述性のある絵画の意念は、唐代、五代の「行旅山水」を継承したもので、11世紀後半北宋中期に完成した表現である。12世紀になると、北宋最後の王朝である徽宗帝の時代(1101‐1125)、絵画と詩が結びつき、文学の抽象的、或いは象徴主義的な手法が絵画に導入された。1124年に完成した「万壑松風」は上記二幅と異なり、叙述的な人物や建築物の点景はなく、深山、雲、松林、瀑布、急流を用いて、詩歌にしばしば現れる「谷間の松の梢を鳴らす風」という題材を描写した。

五代以降、花鳥画の名家が輩出した。四川の黄荃は、唐代の各書家の作風を継承しつつ、集体の妙を兼ね備えている。宋代、その子息である黄居寀は名画を探しては模倣し、黄氏体は北宋初期に流行した。「山鷓棘鵲」は、巧みな筆致で鳥の姿を自然に溶け込ませており、動静の均衡が絶妙な雰囲気を醸しだしている。図案化された装飾的な効果に、唐代における花鳥画の古拙かつ華美な風が留められている。焦墨、逆筆、乾擦法を用いた岩石の陰陽両面、赭石に墨を加えて描いた棘のある枝、そして鳳尾蕨(ワラビ科の植物)の尖った葉と山鷓(キジ科の鳥)のくちばしと爪に見られる硃砂、洗染法はいずれも比較的古風な技法である。棘の生えた枝にとまっている雀は簡素に描かれているが、省略されてはおらず、これもまた早期に意図して真を求めた絵画理念の一つである。

神宗朝では、崔白の風格がよしとされた。崔白は景物を生き生きと捉えたのみならず、構図の配置にも工夫を凝らして活写した。「双喜図」は、二羽の山喜鵲(カササギ)が野うさぎに向かって警告の声を発し、野うさぎはその姿を見つめ、三者の姿態が豊かな律動感を生み出している。樹木の枝や葉、竹、草がさわさわと風に鳴る葉ずれの音も、生命感に満ちた雰囲気を高めている。山喜鵲は、工筆双鉤填彩により描かれ、ウサギの毛の線は細やかに処理されて輪郭線を隠しており、より写実的な姿に描かれている。樹木の葉、竹、草は双鉤填彩であるが、いばらは没骨法で描かれており、木の幹の大胆な筆致が斜面の側筆に触れ、画面全体に躍動感溢れる情趣を増している。

北宋時代においても人物画は大きく発展した。唐代の優れた伝統を継承したほか、この時代特有の精緻な構図や細やかな筆致もまた発展した。「八達春遊」は、衣冠を身に付けた身分の高い士族八名が、駿馬にまたがり外遊する場面を描写している。人も馬もそれぞれ異なる表情や動きに描かれ、各人の目線は緑の衣服を身に付け鞭をふるう人物に集まり、互いに働きかける様子がよく表現されている。人物を突出させるために背景は簡略化され、空間が「虚」と「実」上下二つに分けられている。樹木と岩石の細やかな描写、人物の衣服の華やかな色彩には、皇室特有の華麗な風格が感じられる。「八達春遊」の構図は、唐代の「樹下人馬図」を基礎としているが、全体の精緻さは唐代、五代の作を凌駕している。

「文会図」と唐代の「十八学生図」の主題には関係がある。唐代の画家・閻立本が命を受けて「秦府十八学生図」を描いて以来、後世の画家が模写する題材となり、歴代多くの伝本が残されている。画面には宋徽宗帝と蔡京の題詩があり、古きをもって今を語る─宋皇室が文士を重視した姿勢を示しており、帝王統治下に人材が雲集するのを象徴する図となっている。全体に素早い筆致で、簡素で力強い線、人物の顔を描いた輪郭線は細緻で趣があり、表情の気高さ、姿態の違い、各人の個性が鮮明に表現されている。竹の葉は双鉤法を用い、落ち着いた線に明るい色で着色され調和が取れている。樹木や岩石、草木などの背景の用筆もまた非常に整い繊細で、極めて精妙に描かれており、徽宗画院の精緻かつ明るく清らかな風格が十分に表現されている。