國立故宮博物院 大観─北宋書画特別展
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作品解説

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書法

北宋時代、書法という芸術分野に士人書家が参与したことによって、芸術家の内面に近づいたものとなり、より深い表現を有する芸術様式となった。北宋時代の大家のほとんどが、学識豊富で多芸多才な知識人であった。書家は自らの書風を確立することをよしとし、正式な文書のほか、自書の詩作で心情を表現するのをその主な内容とした。このほか、大いに流行した題跋の考証や書法理論、日常やり取りした書簡に、当時の豊かな文化的生活が十分に反映されている。

蘇軾「黄州寒食詩」(約1084‐1086)、黄庭堅「松風閣詩」(約1102)、米芾「蜀素帖」(1088)―北宋時代における書法の大家三名の貴重な自書詩作である。三巻はいずれも抒情と個性を表現するのに最も適した行書で書かれている。氏の内容と書家の境遇には関わりがあり、書法の表現にもその当時の情緒や創作上の心理が反映されている。

宋 黄州寒食詩 蘇軾
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黄州寒食詩
蘇軾
宋 松風閣詩 黄庭堅
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松風閣詩
黄庭堅
宋 蜀素帖 米芾
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蜀素帖
米芾
「黄州寒食詩」には、外因による病気の苦痛、悪劣な環境、内心の葛藤や矛盾、左遷された心情などが、含みをもたせて奥深く表現されている。書法とは、詩の中の情景を具体的な文字や形に転化するものである。全体に字形は小から大へ、疎から密へと変化し、運筆はしだいに速さを増し、或いは軽妙から重厚な筆致へと変わり、時に飛翔するかのように筆を揮うかと思えば時に停頓転折し、墨色は深く濃厚に潤い紙にしみ込んでいる。筆画の間に糸を引くような線が見られ互いに呼応しており、行間の重心は斜めに傾く字勢につれて左右に移動し、全体の文字に複雑で豊かな韻律感と美感を与えている。

「松風閣詩」に描かれた情景は互いに溶け合い、愉悦の内にわずかに感傷がある。武昌西山への旅の描写を通して、かつてこの地を行過ぎた友人を懐かしみ、友もまたこの地を訪れ、ともに美しい風景を楽しみたいと切望している。最後に世間とのしがらみを断ち切り、友人たちと舟遊びに興じたいとの願いを示している。波のように大きな左への払い、起伏に富んだ提頓、一波三折、收筆であれ運筆であれ全て楷書の筆法を用い、その変化には奥深さがあり、筆を軽やかに止め、ゆっくりと起こし、しなやかで落ち着き深く趣があり、黄庭堅晩年の脱俗の境地、満ち足りた思いが感じられる。

「蜀素帖」全巻は、五言、七言古詩、絶句、律詩など、計六題八首を含む。計71行、556文字、米芾38歳の頃の力作である。詩の内容を見ると、士官への期待がにじみ出ている。書が米芾の多方面に渡る詩才を受ける一方、貴重な絹の上に書法の才が見事に表現されている。運筆は時に速く時に緩やかで、穏やかかと思えば、軽やかに舞い上がり、内にこもるかと思えば縦横に走り、一定していない。結体は縦長に傾き優美である。同一の筆画、同一の文字でも異なる書き方をして、変化の限りを尽しており、蘇軾、黄庭堅とは異なる書法表現を顕示している。