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方寸の世界─印面の様式とその内容
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古銅印の印面は方寸(縦横各一寸:約2.3cm)のものが多く、そのため印面の世界を「方寸」とも称します。

鋳造や彫刻の印面があり、銅印の多くが鋳造したもので、その他の材質の多くが彫刻です。形状は方形、円形、長方形、楕円形で、私印は特に特殊な形状のものが多く見られます。白文(陰文:文字が白抜きになる)に朱文(陽文:文字が朱になる)、マス線や枠線があるもの、文字や図像、実に多彩な変化に富んでいますが、これらが全て小さな方寸の世界に表現されているのです。

文字は図画に端を発しており、商(殷)、周代の文字の多くが象形文字です。璽印は陶拍を源としているため、出土した印鑑の多くが古代の陶器や銅器の紋様と対照して検証できます。故宮博物院所蔵の商璽「亜禽示」は図像印で、文字印の起源でもあります。

戦国時代から前後漢の図像印には、生き生きとした題材がよく見られ、当時の社会に対する理解を深めることができます。また、文字印の膨大な内容─例えば官印は官制の地理の考証ができ、姓名印は姓氏の源流と命名の習慣を遡ることができます。箴言吉語印は古代の習俗や信仰について知ることができ、詩文や名句は前人の思想や心情を感じ取ることができます。これらさまざまな、しかし小さな方寸の印鑑には限りがなく、仏教でいうところの「納須彌於芥子(小さなものに大きなものを納める)」はよい喩えでしょう。

泥をこねて印を押す─印鑑の始祖

殷墟(現在の河南省安陽小屯村に位置する)で出土した商(殷)代晩期の都市から発見された銅璽三点のうち二点─「亜禽示璽」と「孚旬抑直(埴)」は台北故宮が所蔵しています。 それらの鼻鈕と夏商銅鏡鈕はよく似ており、璽文は商(殷)代金文族徽、甲骨文と対照研究も可能で、三千年あまり前の古物であることに疑いの余地はありません。

奇字璽(孚旬抑直(埴))
奇字璽(孚旬抑直(埴))
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「亜禽示」璽

「亜禽示」璽

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雲に龍、風に虎─図象印

図像印は肖形印ともいい、商(殷)周代の陶磁や鋳銅の印模(鋳印に用いた模型)に端を発しています。戦国時代及び秦、漢代には盛んに作られ、龍、鳳凰、鶴、魚、異獣などのさまざまな形状のものが見られます。後に文字と結び付いて図像文字印となり、騎馬の人物や四霊(龍、虎、鳳凰、亀)などの図像は実に生き生きとしています。近世の人物の肖像にはまた新たな工夫が凝らされています。

淳于即.双鳥啄魚紋両面印
淳于即.双鳥啄魚紋両面印
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戰國虎紋印
戦国虎紋印
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万福招来─吉語印

健康、幸福、富貴、平安、長寿─これらは人々に共通した願いです。そのため印鑑には福を願った吉語がよく見られます。例えば、眉寿、金石寿、延年、長生、富貴、万金、日利、発財、吉祥、康楽、平安、無恙などです。この世に生まれて「永受嘉福(永く福に恵まれる)」ことを祈り、何事にもかえられない「宜子孫(子孫繁栄)」もまた願いました。ごく小さな吉語印の中に、中国人の切実な願いや普遍的な価値観、生命感が表現されているのです。

以介眉壽
以介眉壽
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まばゆい朱の色─文人の書斎で用いられた印

元、明代以降、文人たちの印鑑使用はますます一般的になり、よく見られる姓名印や字号印、斎館印のほか、読書記、題署記、校記、鑑賞印、蔵書印、蔵金石書画記、紀年印、書啓尺牘印記などが、各種の書画や典籍、文物に見られます。別号や斎名、読書蔵書印記には、印鑑の持ち主たちの心情や生活、人生のさまざまな様相が残されています。

「平安書札」「黎薇孫手校本」両面印
「平安書札」「黎薇孫手校
本」両面印
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「玉情瑤怨館藏書記」文石印
「玉情瑤怨館藏書記」
文石印
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