:::
皇室の宝璽─清宮の收藏と治印
:::

清朝皇帝が漢文化に敬慕の念を抱いたことはよく知られています。ここでは政治上の目的には触れませんが、古印の収集、新印の製作と使用からその苦心の様子が見てとれます。

銅印の収蔵品は、「金薤留珍」、「避暑山莊」、「毓慶宮」、「守官遺笵」套印が計1649点ありました。古くは戦国時代、新しいものは元、明代まで、多種多様な風格の印があります。

古玉印は秦漢とされているものの、実はその多くが明、清代の模刻で、「虹文薈古」、「集成契賞」、「六文韞古」など94点がありました。

明、清代の篆刻石章は、文彭の款題のある「陋室銘」、「愛蓮説」など23点、多宝格に収納されていた10点あまりがありました。

皇帝は古きを好み、題詩や書、作画のみならず、古代の文物を鑑賞するにも必ず印を押して記念としたため、皇帝が用いた玉製の印鑑は非常に多く、同じ印文で幾つもの印鑑を作ることもよくあり、いつでも使えるよう各齋館や行宮に分けて置きました。乾隆帝のこの種の印鑑だけでも大あり小あり数十点にもなります。

また、皇帝は篆刻によい石材を探して、回文の詩句や自作の詩を歴代の美術化された篆書で印鑑を作りました。例えば、「鴛錦雲章」、「璿璣仙藻」及「寶章集喜」などです。中国古代の漢字に対するその深い思いは、多くの漢族皇帝を遥かに上回っています。

皇帝が好んだ篆字体─乾隆帝の石印

清朝皇帝の漢文化に対する敬慕は康煕帝から始まり、乾隆帝が最も熱心でした。御製詩文集の作品の多くが中華の文物や書画の感想です。現存する台湾、中国故宮の収蔵品にも題記の後に、原作の美を損なうほど至る所に朱印が押されています。

乾隆帝は古代篆字の多彩な変化をこよなく愛し、上級の田黄9点を入手した際、玉筯篆、奇字、古文、小篆、鐘鼎篆、尚方大篆、秦璽篆、漢印篆、9種の異なる字体で印を作るよう命じ、「鴛錦雲章」と命名しました。また、よい寿山石84点を用いて、玉筋篆、奇字、金錯書、纓絡書など、42種の字体で歴代篆書印二組の製作を命じました。それらの篆書体には珍奇なものが多く、美術工芸の字形に属しますが、篆書を深く愛する気持ちは十分に伝わってきます。大臣に命じて製作した満州語の篆字体印を宝璽としたのも、皇帝の篆書好みを証明するもう一つの証です。

鴛錦雲章.循連環.初讀
鴛錦雲章.循連環.
初讀
イメージを拡大 12
鴛錦雲章.循連環.四讀
鴛錦雲章.循連環.
四讀
イメージを拡大 12
鴛錦雲章.循連環.六讀
鴛錦雲章.循連環.
六讀
イメージを拡大 12

自強不息 努力を怠らず─清朝皇室の印

清朝皇室が用いた印には、正式な場合に用いた印と、厳格な規格のあった清代初頭の39点、乾隆13年以降に新たに制定された宝璽25点のほかは、多くが皇帝の御書に押した印と、后妃のものです。

文人の書斎篆刻と同様、皇室の印も字号(乾隆、信天主人)あり、齋館(竹素園、墨雲室、暢遠楼、漱芳齋、寧寿宮、無逸齋、五福五代堂)あり、箴言吉語(自強不息、夙夜敬止、執中含和、化育萬方)、記年や心情を表す言葉(古稀天子、八徵耄念、八徵五福、寫心、四得十全)などがあります。最大の相違点は、皇室の工匠が製作した印はいずれも美しく整った精美なものであることで、流派篆刻の強烈な個性とはっきりと異なります。

信天主人
信天主人
イメージを拡大 12
乾.隆
乾.隆
イメージを拡大 12

銘篆兼珍.陋室銘
銘篆兼珍.陋室銘
イメージを拡大 1
古印の収蔵─清朝皇室の古印収集と鑑賞

  • 銅印
    清宮廷所蔵の歴代古璽銅印は、毓慶宮に収蔵されていた「金薤留珍」1291点、「毓慶宮」100点、もとは熱河行宮にあり、後に頤和軒に移された「避暑山荘」244点、旧骨董房にあった「守官遺笵」10点─計1649点がありました。それぞれが漆塗りの小箱に拓印譜とともにおさめてありました。最も多いのが前後漢、魏、晋、六朝の官印です。
  • 玉印
    古玉印の多くが養心殿の旧蔵品で、「虹文薈古」が最も多く(印譜鈐記80点)、そのほか「集成契賞」8点、「六文韞古」6点など、ほとんどが明、清代に収集された古印譜─例えば、「秦漢印統」にある古印でした。印文と製作方法を見ると、明、清代の模造品ですが、後代の模造品とはいえ、当時の古きを慕う心情や仿古工芸に関する最良の参考資料といえるものです。
  • 3、石印
    文彭の款題がある石印、例えば「陋室銘」、「愛蓮説」などは、文もたいへん美しく、辺款もすばらしいものですが、篆字、刀法から判断するに、おそらく模倣作でしょう。しかし、明代末期の篆刻の大家の印が清宮廷収蔵品に加わっていたことは、皇室が古代の銅印、玉印を収集しただけでなかったことがわかります。明、清代の「篆刻芸術」は、最も高貴な宝物が集められた皇室にも収蔵されていたのです。
六文韞古印譜
六文韞古印譜
イメージを拡大 1234567