展示作品概説

中国書法の各書体は、いろいろ変遷を経て、ほぼ三世紀の三国(220-280)‧西晋(265-316)頃に完成しました。その後楷書‧行書‧草書は、ともに応用の範囲を広め、新しい風潮を展開しました。四世紀の東晋(317-420)時代に、書家は書法の技術を研究し、筆法の中でにある自然に流れる美を究め、工夫をこらした努力と自然な筆遣いとが相まった美しさを追求し、古体と今体ともに兼ね備えた最も美しい書の境地に到達しました。その中で「書聖」王羲之(303-361)は最も典型的な書家だといえます。

南朝(420-589)より隋唐(581-いたる907)に至る間に、帝王の指図のもとで、王羲之らの名跡の収蔵と鑑定、その時代別の順序の組立てに応じた装幀や模写、石刻などがなされ、王羲之を模範とした古典的伝統を建てるに至りました。中唐以後、優雅で細緻な宮廷の書風はだんだんと変化が興り、平民書家は書法創作の中に個人の魅力を発揮した技術を表現し、また士人書家は個人的感情に重きをなした表現するようになり、当時の書法芸術に対する評価は、書家の人格、学識と教養を含めた内容をともに重視するようになりました。このため後世の士人書法は新しい局面を迎えることになりました。

しかし、晋唐の名跡は千余年もの歳月の流れの中で、人為的または時間や空間の変化によって、今ではわずかな数しか残らないのが実情です。このたびの特展は、当博物院所蔵の晋唐人の墨跡と題された15点を完全に展示するとともに、関連ある拓本と絵画各2点をも一緒に展示しました。その中、唐代に模写した<快雪時晴帖>冊と<平安何如奉橘帖>巻、並びに<遠宦帖>巻の三名跡は王羲之の楷‧行‧草の典型的代表作で、博物院初めての王羲之の名跡3点の同時展観という快挙であります。王羲之の草書を伝承した孫過庭の<書譜>巻(678年の書)は、文章、理論及び書法芸術ともに重きをなした長篇の傑作であります。このたびの展覧と相まって、観覧者が孫過庭のこの書を書いた経過、及び本作品の伝承の過程をより深くご理解できますよう、その筆墨、紙質と書き換えた部分などについて、光学的検査を行い、その結果の写真もご参考として一緒に展示しました。この他、後世に天下の行書第二(蘭亭序にわずかに次ぐ)、と評価された顔真卿の<祭姪文稿>巻(758年の書)と唐代狂草芸術の極致とうたわれた懐その<自叙帖>巻(777年の書)や神秘的色彩を帯びた才女呉彩鸞(約九世紀頃に活躍)の<唐韻>冊など、それぞれ由緒ある作品で、書法史上ともに輝かしい代表的な名跡であります。