主な図像_造形と美意識─人物・民俗篇

中国美術の発展において、人物をテーマとした絵画は、花鳥画と山水画よりも長い歴史を有しています。初期の人物画のほとんどが宗教や政治的な目的で描かれました。現在までに発掘された帛画(平織りの絹布に描かれた絵画作品)や墓室、洞窟内の壁画などに、春秋戦国時代から前・後漢、魏晋時代における人物画変遷の軌跡が見てとれます。紙や絹布に描かれた絵画は傷みやすく、保存が困難なため、晋から唐代に活躍した著名な人物画家─顧愷之(344頃-405頃)、呉道子(685頃-758頃)などの真蹟の多くはすでに失われ、目にすることができません。故宮博物院が所蔵する初期の人物画の名品としては、わずかに「宮楽図」のみが唐代晩期を代表する作品として挙げられます。


宋代以降の真蹟は少なくなく、様々なテーマと様式で描かれた人物画-例えば、古代の歴史物語の情景を描いた作品や日常生活の様々な場面を描いた風俗画、唯美的な仕女画、文学作品をもとに詩と絵を組み合わせた人物画など、いずれも真に迫った細やかな筆致で彩色された名品です。「写意」をもって奔放な筆使いで人物を描いた禅画もこの時期より見られるようになりました。張択端(1085-1142)「清明上河図」、蘇漢臣(11-12世紀)「秋庭戯嬰」、牟益(1178-?)「搗衣図」、梁楷(13世紀)「溌墨仙人」など、いずれも傑出した名作というにふさわしく、後世の人物画の発展に大きな影響を与えました。


この度の展覧会では、元、明、清三代に描かれた様々な人物画や民俗画を中心にバラエティに富んだ美しい作品の数々─王振鵬(1280-1329に活躍)「宝津競渡」、唐寅(1470-1524)「倣唐人仕女図」、仇英(1494頃-1552頃)「帝王道統万年図」、呉彬(16-17世紀)「歳華紀勝図」、冷枚(17-18世紀)「耕織図」、楊大章(18世紀)「倣宋院本金陵図」など、計16点の作品を展示いたします。


一部の作品は部分拡大図も合わせて展示され、画家の筆遣いや色遣いはもちろんのこと、その技巧や画風をより具体的かつ詳細にご覧いただけます。この度は展示いたしませんが、人気の高い本院所蔵の名作─唐人「宮楽図」、仇英「漢宮春暁」、清院本「清明上河図」などは、本展示室隣りのマルチメディアコーナーで高画質の動画がご覧になれます。静態と動態を用いた展示を通して、人物画の歴史、服飾制度、民間信仰、都市や農村での暮らしなど、様々なジャンルについてより一層理解を深めていただけると思います。