展示概要
皆さんも「遺珠之憾」(いしゅのうらみ)という言葉をご存知でしょうが、ご覧になったことはあるでしょうか。大阪市立美術館からお借りした書画作品には名だたる名作が数多く含まれ、世界各地の主要な美術館所蔵品の不足を補うに足る作品もあり、本特別展は多数の美術館にとっての「遺珠」と讃えるにふさわしい内容となっています。
この度の特別展で借用展示される書画作品は阿部房次郎氏(1868-1937)の爽籟館旧蔵品です。1943年に阿部氏のご子息である阿部孝次郎氏(1897-1990)によって大阪市立美術館に寄贈されました。阿部氏は関西出身の著名な漢学者内藤湖南(1866-1934)や長尾雨山(1864-1942)に影響を受け、日本のみならず、中国でも積極的に書画の名品を買い求めました。阿部氏のコレクションには、張僧繇(479-?)「五星二十八宿神形図」、呉道玄(?-792)「送子天王図」、李成(916-967)・王暁(10世紀中葉に活動)「読碑窠石図」、燕文貴(10世紀後半~11世紀前半に活動)「江山楼観図」、易元吉(11世紀後半に活動)「聚猿図」、米友仁(1074-1151)「遠岫晴雲図」、龔開(1222-?)「駿骨図」、鄭思肖(1241-1318)「墨蘭図」などが含まれます。この中には清朝宮廷旧蔵の作品も多く、唯一伝世する孤品まであり、本院所蔵品の不足が補えるだけでなく、当該文化圏独自の鑑賞眼も反映されています。このほか、本院所蔵品から精選した関連の書画が同室内に並べて展示されますので、互いに映える書画の美を対照しながらご覧ください。
本特別展は国立故宮博物院初の大規模な書画借用展となります。大阪市立美術館所蔵の名品が台湾で展示されるのも初めてのことです。書画の専門家から愛好家まで、多くの皆さまがご来院くださることと思われ、社会教育や学術振興など、博物館の機能が充分に発揮されるでしょう。また、借用展という相互の交流を通して、両館も良好な協力関係を築くことができ、日本と台湾の文化交流もますます深まることでしょう。