展示概要
元代至治3年(1323)3月32日、元の公主(皇帝の娘)祥哥剌吉(セング・ラギ / Sengge Lagi)によって大都(現在の北京市)の南方にあった天慶寺で「雅集」(文人などが集って美術品を鑑賞したり、詩を詠じたりした風流な集い)が催されました。この雅集は秘書監丞李師魯が責任者を務め、公主王府の官吏の協力も得て執り行われました。公主は出席者に所蔵の書画作品を披露してともに鑑賞し、作品に題跋を入れるよう求めました。この雅集は元朝皇族が中華の書画芸術鑑賞の集い開催を示す重要な出来事の一つとされ、研究者らは公主の収蔵印「皇姉図書」を元に公主所蔵の書画リストを作成し、文化史の視点から元朝皇室コレクション特有の新鮮な趣向の分析が行われています。
祥哥剌吉公主は忽必烈(フビライ/Khubilai)の曽孫にあたり、祖父は皇太子真金(チンキム/ Jingim)、父親は真金の次男答剌麻八剌(ダルマバラ/Darmabala)です。元朝皇族で書画を収蔵したのは公主だけではありませんでした。公主の婿である元文宗(図帖睦爾/トク・テムル)は奎章閣を設置し、学士や文臣とともに図画や書籍を観覧したほか、美術品の鑑賞や収蔵も行い、「天暦」や「奎章」などの収蔵印を使いました。元順帝(妥歓貼睦爾/ドゴン・テムル)も「宣文閣宝」という収蔵印を使い、宋代と元代の重要な書画作品を収蔵しました。
この度の特別展では、宋代と元代の名品多数を含む43点の書画作品を展示いたします。展示期間制限のある一部作品は前期と後期に分けての展示となります。上述の元朝皇族3名の書画コレクションと合わせて元代皇室コレクションリストをご紹介することにより、モンゴル文化という視点から元朝皇室が中華文化圏の書画芸術に関りをもった、その文化的意義についても読み解きます。過去の展示で、元朝皇室による書画鑑蔵の漢化的な意味合いが強調されていた点と比較すると、元代の多民族文化交流により花開いた成果がより積極的に展示として表現されています。ご観覧の皆様に「あらゆるものが内包された」文化上の新たな視野をご覧いただきます。