展示概要
文学と絵画は芸術表現の様式が異なりますが、南宋時代の扇面や冊頁などの小さめの絵画作品には「詩情画意」を含んだ作品が数多くあります。それらの小さな絵は細緻な描写に詩情が溢れ、展覧会では一般に「小品絵画」と称されます。このような詩画作品は北宋の蘇軾(1037-1101)などが、絵画は「無声の詩」であり、詩は「無形の絵」或いは「声のある絵」であるとしたのを源としており、それに導かれて生じた芸術上の潮流です。更に北宋の末に徽宗皇帝(1082-1135)が絵画で詩題の具象化する表現を積極的に推奨したこともあり、宮廷画家による「詩画合一」を理想とする実践が多くなされました。
展示内容は「皇帝の題詩」、「空間の広がりと瀟洒な小景」、「山水の澄み切った音色」、「宮廷の庭園と詩意」、「花見の楽しみ」、の五章に分けてご覧いただきます。第一章「皇帝の題詩」では、書にも長け詩詞名作も愛好する南宋皇室が、芸術文化の素養を重んじた点に注目した展示となっています。詩画の創作を積極的に取り組んでいた南宋皇帝が書いた詩詞を、宮廷画家の伝世作品にも見ることができます。
第二章「空間の広がりと瀟洒な小景」では、もやに覆われながらも広々とした清く澄んでいる風景が描かれた、南宋小品絵画の醸し出そうとする詩的な雰囲気の特徴をご説明いたします。この表現方法は北宋の「小景」絵画を継承し、更なる発展と転化を遂げています。
第三章「山水の澄み切った音色」では、山水絵画の奥深さへお誘いいたします。南宋時代に制作された、西湖などの江南の風景を中心とした山水画は、北宋時代の『瀟湘八景』の表現手法から大きな影響を受けています。これらの小幅山水画は昼夜、朝夕の風景が描かれており、静謐な自然の一角に漂う詩情が表現されています。こちらのコーナーでは、『坐石看雲』と『松下曳杖』を対照して展示し、「無声の詩」と「声のある絵」について、芸術批評的な観点による絵画創作への影響をご解説いたします。
第四章「宮廷の庭園と詩意」では、南宋宮廷の庭園を描いた山水画と詩詞のイメージを重ね、宮廷の唯美的なロマン溢れる情趣をご鑑賞いただきます。第五章「花見の楽しみ」では、花々の詩や花見の情景、花の品評などの楽しみを織り交ぜた南宋花卉画の芸術表現をご覧いただきます。本特別展を通して、詩と絵が渾然一体となった南宋小品絵画の芸術的特色についてご理解を深めていただければと願います。